重版とは?重版・増刷・改訂の違いを含め解説
SNSや街中で「重版決定!」という広告を目にしたことはありませんか?
実写化したドラマや映画のヒットにより、発売からしばらく経って重版されることもあれば、SNSで広まり発売前から重版が決まる例もあります。
本記事では、重版の意味、類似語との違い、出版社がどのようにして重版を決定しているのかを解説します。
重版とは
重版とは、すでに出版された書籍をふたたび印刷することです。
重版された書籍が販売されることを、出版業界では「重版出来(じゅうはんしゅったい)」と呼びます。
重版は著者や出版社にとって嬉しい出来事とされています。
重版されるたび世の中に出回る書籍の部数が増えるため、より多くの人が書籍を目にし、手に取る機会を得られるからです。
重版・増刷・改訂の違い
重版と同じく、よく耳にする言葉に「増刷」「改訂」があります。
どれも書籍を再び印刷・出版する意味を持つ言葉ですが、この3つには以下のような違いがあります。
- 重版:前回の版に加筆・修正している
- 増刷:前回の版から変更がない
- 改訂:前回の版と内容を変え、別の新たな書籍として出版される
前回の版と同じものを印刷して出版するのが増刷、前回の版と異なる内容のものを印刷して出版するのが重版と改訂です。
重版と改訂の相違点は、その内容の変更度合いです。
重版は、大幅な変更ではないものの、一部を加筆・修正して印刷することを指します。
これに対し、改訂は重版より大幅に内容を変更し、新しく印刷することを意味します。
制度の変更や追加など、以前の版では情報が古くなってしまう場合などに改訂版が発行されます。
重版の場合、内容が変わっていてもそれ以前の版と混ざって書店に並べられてしまうことがありますが、改訂の場合は以前出版されたものとは別の書籍として扱われるため、読者にわかりやすく最新の情報を届けることができるのです。
出版社が重版に慎重な理由
売れ行きが好調であったり、売り上げが見込める場合は重版が検討されます。
しかし、そう簡単に重版が決まるわけではありません。その理由は、書籍販売独自の仕組みである「委託販売制度」に隠されています。
委託販売制度とは、出版社が書店に書籍の販売を委託し、書店は一定期間内であれば売れ残った商品を返品できるという販売制度のことです。
出版社は売れ残った場合に在庫を抱えなければならず、重版の際には大きなリスクを伴うのです。
そのリスクを避けて重版を決断する根拠となるのが、以下の3要素です。
- 実売数:書店で実際に売れた冊数
- 在庫数:出版社が持つ在庫
- 注文数:書店からの注文
ある1店舗で実売数や注文数が高くても、他の書店での売り上げが良くなければ在庫は減っていきません。
また書店に「置きたい」と思ってもらうことができて在庫が少なくなっていたとしても、売れ行きが悪ければ、その後返品され在庫を抱えてしまいます。
そのため上記3つすべてが満たされている必要があり、どれかひとつでも欠けていた場合、重版はためらわれます。
重版は出回る書籍の部数が増える嬉しい出来事
著者・編集者・出版社、書籍の出版に関わった誰もが、その本がより長く、より多くの人々に愛されることを望んでいます。
もし重版された書籍を手に取る機会があれば、それが何版目なのか確認してみるのも面白いでしょう。どれだけの人々に親しまれてきたかを知ることで、その書籍をより大切に思えるかもしれません。